こだわりの一品

店主による、選りすぐりの一品をご紹介いたします。茶碗、酒器、絵画、壺…様々なジャンルにわたり、こころ踊らせる品物をお届けいたします。また、掲載商品は購入可能です。

御本茶碗 銘/翁

御本茶碗とは、日本から朝鮮へ注文を出し、現地の釜山の倭館(対馬藩の領事館のようなもの)において朝鮮陶工たちが製作したお茶道具の事です。

古くから請来された高麗茶碗に魅せられていた権力者たちや数寄者の需要に応えるため、対馬藩の宗家が現地へ役人を派遣して製作に当たらせていたようで、なかにはその役人の名が冠されたお茶わんもあるくらいです。しかし陶土の確保が困難になったことなどから享保三年(西暦1718年)に倭館の窯は廃窯になってしまいます。

呉器、紅葉手、半使、御所丸、金海、伊羅保、など名碗として主に大名家に伝わったそれらは、明治の売り立てにおいて手に入れた実業家たちのコレクションになり、今日では美術館に収蔵されていることが多いものです。

こちらもそんな御本茶碗のひとつ、通常は華奢できれい寂びの印象が強いものですが、こちらは豪快な作振りが魅力なのではないでしょうか。

黄褐色の釉が滑らかに融け、高台に掛外しを作っています。素地は轆轤目が意図的に目立つように引かれ、二筋ヘラ削りが入ってアクセントにしていますね。

高台は太く高くがっしりと削られてとても手強く作られています。口径も大きくこれほど豪快な作振りはなかなか見ることがありません。口縁にはべべラ(轆轤の引き上げで土が足らなくなって山道が歪んだ状態になること)や胴にはあちこちに石ハゼが見られますが、これも意図的なものかもしれません。また見込みには鏡と呼ばれる茶溜まりがあり、いろんな約束をお手本通りにクリアーして作られたものと思います。

箱は大正頃のようで、そこには「古渡朝鮮 脇井戸」とありますが、もちろん井戸脇茶碗と呼ばれるものとは別物ですが、しかし豪快な作振りからそのように書いたのかと想像されます。蓋裏には銘があり「翁」と入っています。お仕覆は大柄な牡丹の花が大胆に描かれていて、これは想像ですが、その頃の朝鮮の裂を合わせて仕覆を作ったように思います。明治大正頃にも盛んに彼の地の文物は請来されていましたので合わせたのじゃないでしょうか。

茶映りがいいのはもちろん、その造形意識にも強く惹かれて買いましたが、女性には少々大き目のものかもしれません。しかしこの御本に似合わず豪快なところが見どころと思いますし、古陶磁好きの方にはたまらないところでしょう。

お茶はなにも茶会だけに使うというのではなく、日々食事の後に抹茶を点てて頂くのはとてもいいもの、ぜひ毎日のそんなシーンにお使い頂ければと思います。

口径15.9センチ 高さ8.2~8.7センチ

江戸時代前期~中期 17世紀後半頃

口縁に5ミリほどの微細な削げがひとつ、ニュウが3本ほどありますが、高台を渡ってはいませんので特にお使いになるのに支障はありません。ただし事前にぬるま湯に漬けてからお使い頂くなどの配慮は必要です。(古陶磁のお茶碗についてはいずれもそのように丁寧に使って頂くのが常識なので蛇足ながら書きました。)

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