漆絵の世界、広義には蒔絵なども入ってくるのかもしれませんが、ここでは各種顔料を混ぜた色漆で文様を描いているものを云っています。その豊饒な魅力は朴訥な逞しさにあるかと思います。大胆なモチーフをバシッとアグレッシブにフレームに放り込むいにしえ人の豪胆さが、現代に生きる我々を惹きつけて放しません。
この漆絵の優品はサントリー美術館をはじめ、各美術館に収蔵されています。いろんな漆絵の本によく紹介されている有名なものに、農耕図折敷があります。今回ご紹介する丸盆と同じく、地色を緑の漆で塗り込めて農民の働く姿が見事な筆致で描かれています。この丸盆も清水寺のような社寺の建物が描かれていたり、鳥居や板葺の苫屋が描かれています。裏面は黄漆で塗り込め、刷毛振りが残るような塗り方です。もともと脚はなかったようですが、後に胡桃の脚をつけたようです。
黄色や黒、渋い色調の朱などを使って中世の色濃い世界観を表現しています。源氏雲の仕切りは洛中洛外図などにも使用され、岩の表現は当時の狩野派が好んで描いていた手法です。
今回セットでとも思いましたが、お好みもあろうかと思い分けてご紹介することに致しました。
漆絵を過去たくさん扱ってきましたが、ひとつの到達点として残っていくようなお品がご紹介出来たことが嬉しくまたありがたく思い、こだわりの一品としてご覧頂きたいと思います。
いずれの盆にも経年の擦れや打痕などがありますが、大きな傷みや補修はなくコンディションは良好です。
高さ6センチ 直径35.8~37センチ
御売約ありがとうございます。