こだわりの一品

店主による、選りすぐりの一品をご紹介いたします。茶碗、酒器、絵画、壺…様々なジャンルにわたり、こころ踊らせる品物をお届けいたします。また、掲載商品は購入可能です。

信楽 壺

信楽の壺と云うのは中世古窯の代表と呼べるもの、その堂々としたフォルムと焦げや白カセ、火色、そして自然釉などのマチエールの質感の美しさで多くの古陶磁好きを魅了してきました。まさに壺と云うジャンルのとどめを刺すものと云えましょうか。。

さてこの壺、それほど派手な色や自然釉があるわけではありません。目もくらむような、あるいは驚くような窯変があるわけではありません。しかしそんなものはただ単に派手な色と云うだけで、本当に味わい深いのはむしろこちらの方だ、とそんなことを語り掛けてくれるような気がします。冬の枯田に薄雪が積もるような、天平古材の白土の味わいのような、そんな形容がぴったりとくる質感じゃないでしょうか。

木節粘土によって出来た田んぼのようなひび割れ、薄茶色のところどころが白く抜けた変化がありとてもとてもいい風情です。口作りは太い盤口形で古手のものにときどき見られるものですね、ザクザク、ボコボコとした畳付には出下駄がついています。肩には三の字のような窯印が二か所、どこかで見たなぁと思って本を紐解くと白洲正子さん旧蔵の掛花入に同じ印がありました。同じ兄弟だったんでしょうかね。

この壺に限ってはニュウなどの疵さえも景色のひとつ、滋味深い菜のような壺、ここには里山などで見られる日本の原風景が表れているようじゃないですか?

枯れ侘びた風情を愛する方に、永く座辺愛蔵の一品に加えて頂きたいと思います。

口縁に欠け、ニュウが2本入っています。畳付付近にも入っているようですが、反対側から覗いてみてもはっきりと通っているのは確認できません。が、やはりあるように思います。本文中にもあるように疵があまり気にならないタイプの壺であると思います。

高さ32.1センチ 胴径28.0センチ 室町時代前期頃

御売約ありがとうございます。

過去の一品