古染付、そう呼ばれる中国の陶磁、しかし中国の方と話をしていても彼らはそれを「日本のやきもの」として見ていて自国のものとはあまり思っていないようです。
それはこの古染付なかでも型物と呼ばれる動物や草花、扇子や琵琶など斬新なアイデア溢れるものが日本からの注文で焼かれたこと、そして神品と呼ばれるような至高の逸品を作ることが目的である人々にとって、口縁などの釉剥けの「欠点」は粗雑で稚拙なものと見なされてしまうからでしょうね。
しかしその釉剥けを「虫食い」と呼んで面白がる、もののあはれという心情にフィットする日本人独特の見かたがあるわけですね。また文様も息が詰まるような神々しいものではなく、あくまでも自由闊達な境地に遊ぶ桃源郷を表したものが喜ばれ、なおかつ茶禅の境地にも通じることから評価されてきたわけです。
前置きが長くなりましたがこの古染付、意匠としては祥瑞としてもいいようにも思いますが、約束の胡麻土ではありませんので、その一群とは違います。しかしこれほどこのジャンルがお好きな方に好ましい器形や発色、風情はないのではないでしょうか。
地紋様を毘沙門亀甲で埋め尽くし(古九谷などにもよく写された文様ですね)雲形の窓には大きくおめでたい吉の文字が配されています。その呉須は見事な発色で乳白の素地と相まって美しい表情を見せてくれています。
器形はやや内抱えで口縁には虫食いがあちこちにありますね。そのひとつからニュウのように見えるものが見込みに走っています。たしかになにか衝撃が加わってクラックは入ってしまったのだとは思いますが、反対側の釉層にはルーペで仔細に観察しても見られません。弾いてもまったく鳴くような音もしませんし、結局のところ、内側の釉層と素地にはニュウが入ってしまったけれどごく薄いものだったので、外側の釉層には響かなかった、したがって磁貫ということになりますでしょうか。ですから厳密に云えば疵ということになるのかもしれませんが、通常のニュウより程度のずっと軽いものと理解して頂ければいいのではないかと思います。もちろんお使いになるのに何の支障もないことは云うまでもありません。
味のいい箱に収められていますが、革ひもが切れてしまっていて結べない状態です、しかし更紗の風呂敷で包まれていますので特に収納にも問題はないかと思います。更に木地蝋塗の外箱に収められてこれにも大正更紗の風呂敷で包まれています。
上品な宝尽くし文様のお仕覆が添っていてこちらもいい風情と思います。
参考画像は同手というのではありませんが、吉字を配したお皿、また器形では全く同じものが掲載されておりましたのでご参照頂ければと思います。
高さ8.6センチ 胴径9.9センチ 口径7.8センチ
明時代末期~清朝初期
御売約ありがとうございます。