たまには如何? 現代美術と云うもの
しばらくぶりに書いております。いや~寒いですねぇ~、東北や北陸、日本海側はとくに大雪が降ったり、北海道では台風並みの低気圧と最大級の寒波がダブルでやってきたり、(これを書いている2月16日現在は落ち着いた天候のようですが・・)毎年の事とは云え、雪下ろしや道路の除雪などが大変ですね、お見舞い申し上げます。
さて比較的暇になることが多いこの季節、こんなときはあせって仕事してもろくなことにならない、ということで定番の美術館巡りであります。普段は仏教美術や茶道具、考古の展示を観に行くことが仕事柄多いわけですが、もともと絵画がスタートで始めた商売、今日は現代美術を観に行ってきました。
最初に行ったのは品川の駅からちょいと歩いた原美術館、実業家原俊夫氏が祖父邦造氏の邸宅を一般に公開し、現代美術を中心に意欲的な企画を打ち出している美術館です。今回の展示は写真家、蜷川実花の個展個展「蜷川実花:Self-image」ですね。表現の出発点であるセルフポートレートを基本に、氏の最大の特徴であるヴィヴィッドな色の洪水が押し寄せる映像作品や、エロスと死を象徴的に切り取った作品、赤い唇のどアップはなかなかエロティックであります。そして別の部屋ではそこだけ桜を撮った作品、まるでイルミネーションのように見える桜は妖しい魅力に溢れております。
そしてざらざらした質感を感じさせるようなモノクロの作家自身のポートレートの群れ、カッコいい~写真が数多く観ることが出来ます。5月10日(日)まで展示しているようなので、ご興味ある方はぜひどうぞ。
そして木場まで移動、正確には半蔵門線の清澄白河駅がいちばん近いようですが、東京都現代美術館にやってきました。こちらはモノ派と呼ばれた石や木材を使った作品で有名な菅 木志雄の個展「菅 木志雄 置かれた潜在性」が開催中です。以前からオークションなどでは小品を見ていたことはあったのですが、なにしろ巨大なモニュメントのような作品はこんな機会じゃないとなかなか観ることが出来ませんね。
広大な空間に張り巡らされたワイヤーと、その交差するポイントごとに置かれた木材のかたまり、コンセプトと云うのはもちろん大事ですが、まずなにより目に飛び込んでくる作品のフォルムや質感、これは現代美術が難解と云う人にも馴染みやすい爽快感がある展示ではないでしょうか。また作家の製作ノートや映像で観ることができるインスタレーションなども網羅してまとまったボリュームのある展覧会でした。個人的には蝋を使って作ったサークルのような作品が好きなものです。
さて常設展示では有名な「ヘアリボンの少女」をやはり観ておきたいですね。購入時には「あんなマンガみたいな絵を買うのに6億円も使うなんて!」とヒステリックで的外れな声が上がったようですが、今ではその金額で買うのは不可能なんじゃないでしょうか。いや金額の問題ではなく、現代美術を理解しようとしない人に如何に理解してもらえるように伝えていくか、公的美術館の永遠のテーマでしょうね。日本の状況に絶望的な人は活動拠点を海外に移している人も多いようです。また神聖な美術作品を換金するなど実にけしからん!と云った心情も未だ根強く残っているのも事実でしょう。私たち美術商にはそんな誤解を解いていくような表現が課せられているかもしれません。粘り強くめげずにいいものをいい!と叫び続ける矜持が試されているのだとも思いました。
さてそんな堅いことは、まあさておいて、帰りに下町森下で久しぶりに一杯呑って帰ってきたのは云うまでもありません。あ~現代美術もいいけど、この煮込み、たまらんな~。
[展覧会]2015年2月16日