こどう展

レダと白鳥/福沢一郎

福沢一郎さんは戦前から渡欧し、彼の地を席巻していた美術のムーヴメントであるシュールレアリズムの影響を強く受けた方です。後には氏独特の主題の解釈と、その世界観の表現方法を獲得していきました。世界各地を旅する中で、触発されたイメージを作品にしていったわけでしょうが、ギリシャ神話に出てくるレダと白鳥のストーリーもそのひとつだったのかもしれません。白鳥に化身したゼウスがスパルタ王の妻であるレダを誘惑する、と云うもののようです。

この画面も、湖面の浅瀬を走るレダと追いかけるゼウスである白鳥が、力強いタッチとさわやかなブルーでまとめられ、清涼感を覚える作品に仕上がっています。

早くから版画の有効性に気付いた氏は、数多くの版画を制作していますし、独特の魅力を醸す、リトグラフのための表現を工夫していったようです。即興的に筆を走らせていったときに生まれるダイナミズムを、余白を多用した画面にストレートに移しとろうとしたのでしょうか、この作品もそのようなエモーショナルな高まりが、前述した清涼感と共に愉しめるものになっています。

額装サイズ   縦74.5センチ  横56.3センチ
イメージ    縦38.0センチ  横52.0センチ
版画(リトグラフ)
右下にサイン
限定150部
1989年上毛新聞社創立103年記念として同社が刊行したもの
(怜風書房刊 「福沢一郎全版画集」所載 カタログレゾネNo.119)
版面とマットにわずかなシミ ガラスは無くなっています。
額に擦れあり

福沢一郎(ふくざわ いちろう)
1898?1992年、群馬県生まれ。
彫刻家を志すも、パリ遊学中に絵画制作へと移る。
昭和初期にシュールレアリスムを日本へ紹介した。
代表作「他人の恋」「科学美を盲目にする」など。

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