現代美術と云うもの
しばらくまたサボっておりましたが、ぼちぼち書こうと思っております。それにしても二週連続の大雪はすさまじいもんでした。なかには雪崩で家が崩壊した方もいらっしゃるようで何とも大変なこととお見舞い申し上げます。そこまでではなくとも車中泊になってしまった方や、駐車場などの屋根が雪の重みでつぶれたお家など、困るようなことが起こってしまったわけで、自然災害ゆえ仕方ないとは思いつつ、いろんな対策をしていかないといかんのかな~と思わされました。
さてそれでも日常は続いていくわけで、先日は現代美術の展覧会を二つ観てきました。最初に竹橋にある近代美術館。ここでは工藤哲巳の回顧展「あなたの肖像」が開催されています。3月30日までですからまだ余裕がありますね。
作品は年代別に展示され、作家の進化が見て取れるようになっておりました。最初はポロックばりのドリッピングの作品から、抽象表現主義の影響が大きく表れた平面作品から始まります。ただ彼らと違うのは原子物理学や量子力学などから引用された言葉のイメージをキャンバスにぶつけたと云うコンセプトの違いがあると思います。そして内臓や眼球、男根などのグロテスクなイメージをちりばめたインスタレーション、近代ヨーロッパの非人間的な抑圧を風刺した作品から次第に内省に向かい、鳥籠に閉じ込められた作家自身が編み物に没頭する作品へ、そして最後はそれらを抽出しつくした糸巻きのような作品、東洋人が行き着く南画や水墨のような心象をただただシンプルな線だけで表しているようなものになっていきます。
パリでの活動がメインであった作家の最重要作品は海外の美術館の所蔵になってしまっているようですが、それでも青森県立美術館の熱心なコレクションがあったようで、今回の展観の主催者でもあります。なかなか理解を得にくいこうした作品群を収蔵していくキュレーターの努力があったんでしょうね。
同時代のラウシェンバーグなどとリンクするようなソフトスカルプチャー群は、今も模倣する作家が多いと思いますが、閉塞的であった当時の一般常識からすれば実に衝撃的なアタックだったろうと想像できます。もし彼らがそのまま現代にタイムスリップしてきたらどうなるのか?なんて考えたりもしますが、テクノロジーが新しい美術を生んでいる昨今、意外と凡庸な波にのまれてしまうのかもしれませんが・・。
表面には穏やかな日常のなかで一身にこの世に漂う矛盾や恐怖、戦慄を受難してしまう人の表現が日常を揺さぶる行為、それが現代美術の意義のひとつかと思いますが、間違いなく彼の作品はその行為を行ってきたんではないかと想像しています。
さて今度は渋谷まで移動、松涛美術館で行われている「ハイレッドセンター:直接行動の軌跡展」です。高松次郎さんの高、赤瀬川原平さんの赤、中西夏之さんの中でハイレッドセンターと名乗った彼らの美術行動は前述のごとく、一見平穏な日常の化けの皮を剥ぐ行為ですね。特に赤瀬川原平さんはトマソン、路上観察学会や芥川賞作家としても著名なので、美術に縁が薄いと云う人でもその名を知っておられる方が多いと思います。
さまざまな行動をニュース記事のように説明するキャプションは事の顛末を説明するわかりやすいものでした。山手線事件と呼ばれるものを実際に車両やホームで目にした当時の人はさぞや不安な気持ちにさせられたんだろうなと思います。また千円札事件として有名な法廷まで巻き込んだ、壮大なインスタレーション作品は(そう呼んで差支えないのかどうかわかりませんが・・。)実に不謹慎な面白さを感じさせてくれます。
一日見てきて感じること、それは多様な表現を日本からもっと発信していくべきなんだろうなと云うこと、それは自分自身への叱咤でもあり、奮起せざるを得ない自分の明日からの仕事へのエールと受け止めていました。
[展覧会]2014年2月21日