夏の終わりにちょっと寄り道
こころところ不順な天候に閉口していた子供たちもようやく暑さが戻って、残り少ない夏休みをプールや海で惜しむように楽しんでいると思います。夏は夏らしく暑くなってくれないとなかなか商売は難しくなりますね。我々の商売はいつ何が出るかわからないので、あまり季節は関係ないのですが、それでも何となく8月と云うのは停滞気味ではあります。お客様がお休みモードでいろんなところにお出かけになったりしますのでね。
さてわりかし暇を持て余し気味のところ、今日も何かないかとうろつきまわっておりましたが、ふと思いついて乃木坂へ。国立新美術館まで行ってきました。展覧会タイトルにもあるように20世紀を代表する彫刻家の一人「ジャコメッティ」展を観に行くためでした。
千代田線の乃木坂駅、そこから直結するアクセスの良さ、これはとてもありがたいところ、雨で出かけるのがおっくうでも、駅に着けば濡れずに美術館へ直行できます。チケットを購入し中へ。
開館10周年記念と銘打つだけあって力のこもった展覧会と思いました。初期のキュビズムや構成主義のような彫刻、この頃は流行に乗っかっている感があって、あまり独自のスタイルは感じられませんが・・、そこからミニチュア作品、油彩、素描、エッチングやリトグラフなどの版画など、かなり幅広く前時代を網羅した展示になっています。彼の版画制作に強い影響を与えたと云われるマーグ画廊の経営者のマーグ夫妻。もともと摺師でパリで人気を博した美術誌、デリエールミロワールを作っていた画廊ですから、大いに版画の魅力を作家に吹き込んだであろうことは想像に難くありません。
画像はチェースマンハッタン銀行の依頼で製作された作品の内のひとつ。この部屋のみ撮影が許可されていて、多くの人がカメラに収めていましたね。
私は評論家ではないのでジャコメッティ作品について批評は出来ないしするつもりもないのですが、目の前の対象を凝視していくとこんな風になってしまうのでしょうか。余計なものを剥ぎ取った結果産み出されたフォルムなのでしょう。そしてこんなに抽象化された細い人間たちも細部を観察すると、ちゃんと人間の自然な骨格、筋肉、造形を外していないのが彫刻家の修練のたまものなのかもしれません。
せっかく美術館に行ったのならついでに(ついでと云うと失礼ですが・・)観たかった日本民藝館の展覧会「色絵の器」展にも足を伸ばします。
こちらは前から馴染みのある日本や中国の器のなかで、民藝館テイストの素朴で愛らしい色絵たちがズラッと並んでいます。扱ってきた種類のうつわたちも数多く並んでいるので、新鮮な驚きは失礼ながら無いんですが、好きなものがいっぱいあるからホッとするという感想が正直なところですかね。でもこうしてたまには自分の道程を確認する作業も必要なのかなとも思っているので、どちらかと云えば民藝館に観に行くことの方が重要なのかもしれません。
いずれにしても常にいいものを観る作業は私たちの仕事に於いて必要不可欠なものなので、暇なようでやっぱり重要な仕事なんですね。
[展覧会]2017年8月26日