雑記

座辺の李朝

 まだ昼間は暑かったりしていますが、さすがに夜になるとめっきりと涼しくなりましたね、蝉の声の代わりに秋の虫の鳴き声が聞こえてきて秋がやってきたなぁ~と実感します。美味いものがたくさん出てくる季節、この間は初さんまを敢行しましたが、まだまだ愉しみはいっぱいありますねぇ、落ち鱧と松茸の土瓶蒸しなんて名残と走りが出会っていいもんです。他にも戻り鰹や秋茄子、茸のたぐい、あ~キリがない、お酒の量もいや増すというもんです。

 さて食い意地の張ってる話はさておき、このタイトルご存知の方は多いでしょう、中川竹治氏の私家限定版の著作「座辺の李朝」を最近買うことが出来ました。昭和46年に700部限定で出版されたこの本、古本屋さんでもめったに手に入ることがない希少本です。戦前からの李朝コレクターである氏の収集した朝鮮陶磁の逸品が載せられています。

 染付や鉄砂の愉しいものが数多く掲載されていますが、とりわけ多いのは様々な器形の白磁類です。氏は述べています、サラリーマンである自分には美術品として声価の高いものは望むべくもない、したがって魅力のある疵物や当時比較的リーズナブルであった白磁に絞って収集したと、たしかに疵があっても今では手に入れることはほぼ不可能な秋草手や、面取、祭器、筥、碗や徳利などこれらも素晴らしいものがコレクションされています。

 時代が良かったとか、値が安かったからとかという意見もありましょうが、これらのコレクションに必要だったものは何よりも李朝と云う時代に生まれた陶磁器に寄せる限りないシンパシーと、手に入れて飾ると云うよりも座辺でとことん撫でさすって愛する情熱だったと思います。

 私も朝鮮陶磁が大好きで商っているわけですが、ややもすると日常の仕事の一環に堕してしまう感覚があります。しかし以前から欲しいと思いながら手許にないこの本がやってきて、そして夢中になって読んだのちに甦ってきたのは情熱を持ってものに接すると云う感覚でした。ただ好きなのではない、好きで好きでたまらない、愛して愛して愛しぬくと云うコレクターのような熱気を帯びた気持ちでお客様にもお勧めしなくては・・。そうでなければ情熱に共感なぞしてもらえるはずも無いと。

 想いを新たに情熱を持って取り組んでいきたい、そう思わせてくれる本を手に入れられた、少々高い本ではありますがその価値は十分にあるいい本です。皆さんも如何とお勧め出来ないのが(とにかく世の中に売り物として出てくることが少ないので)難ではありますが・・。b1

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日常]2014年9月7日